平泳ぎで使う筋肉の鍛え方~速くなるための筋トレ方法とは

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平泳ぎで使う筋肉の鍛え方~速くなるための筋トレ方法とは

平泳ぎは、4泳法の中で最も難しいといわれる泳ぎ方で、泳ぐ際にはさまざまな筋肉が複雑に動くことで、普段使っていない筋肉が使うわれるため、初心者の中には、慣れないせいで筋肉痛に悩まされる人は多いことでしょう。

これから平泳ぎを始めるという人は、どんな筋肉が使われているのかを意識しながら泳ぐことが大切です。さらに、陸上での筋力トレーニングを加えることで、平泳ぎのタイムの向上につながることから、平泳ぎで使う筋肉の効果的なトレーニング方法も合わせてご紹介します。

平泳ぎのストロークでよく使う筋肉

平泳ぎの手の動きは、水をつかむキャッチ、水をかくプル、手を前方に戻すリカバリー、真っ直ぐ伸ばすグライドの4つに分けられます。

さらに、プルには外側に向かって水をかくアウトスイープと、内側に向かって水をかくインスイープがあります。これらの動きを実現するためには、肘から上の上腕部や、肘から下の前腕部のほかに、肩や背中などの、主に次の7つの筋肉が使われます。

平泳ぎのストロークでよく使う7つの筋肉の図解

1.広背筋(こうはいきん)

広背筋とは、背中から腰にかけて覆う筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の広背筋

手を体に引き寄せるほか、腕を伸ばしたり内側にねじったりする肩関節の動作に関与し、平泳ぎではキャッチの際に使われます。

広背筋を鍛える代表的な方法に、専用マシンを使ったラット・プルダウン(Lat Pulldown)というトレーニングがありますが、ゴムチューブを使うことで、家庭でも同じようなトレーニングを行うことができます。

動画のように、チューブを左右に引き広げることによって、広背筋に負荷をかけましょう。その際、猫背にならないよう胸を張って行うのがポイントです。

2.上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)

上腕二頭筋とは、いわゆる力こぶと呼ばれる筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の上腕二頭筋イラスト

手のひらを上に向けた状態で肘を曲げたり、腕を外側にねじったりする動作に関与し、平泳ぎではキャッチ、アウトスイープとインスイープの切り替えに使われます。

上腕二頭筋の代表的なトレーニングの方法に、ダンベルやチューブによって負荷をかけた状態で、手のひらを上に向けて肘を曲げるアーム・カール(Arm Curl)があります。

3.上腕筋(じょうわんきん)

上腕筋とは、上腕骨と上腕二頭筋の間にある筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の上腕筋の図解

手のひらを上に向けた状態と下に向けた状態の両方の肘を曲げる動作に関与し、平泳ぎではキャッチ、アウトスイープとインスイープの切り替えに使われます。

上腕筋を鍛えるためには次の動画のように、上腕二頭筋とは反対に手のひらを下に向け、負荷をかけた状態で肘を曲げるリバース・カール(Reverse Curl)が効果的です。反動をつけずに、ゆっくり行いましょう。

4.腕橈骨筋(わんとうこつきん)

腕橈骨筋とは、前腕の親指側にある筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の腕橈骨筋の図解

手首を縦にした状態で肘を曲げたり、ペットボトルの蓋を開けたりする動作に関与し、平泳ぎではキャッチや、アウトスイープとインスイープの切り替えに使われます。

腕橈骨筋は、上腕筋と同様にリバース・カールで鍛えることができるほか、肘の替わりに手首を使って引き上げるリバース・リスト・カール(Reverse Wrist Curl)があります。

5.大胸筋(だいきょうきん)

大胸筋とは、胸の表面を覆う筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の大胸筋の場所

胸の前で物を抱えたり、腕を内側にねじったりする動作に関与し、平泳ぎではキャッチからリカバリーまでのストローク全般に使われます。

大胸筋の代表的なトレーニングといえば腕立て伏せですが、女性や高齢者には、床の替わりに壁を使った壁腕立て伏せがおすすめです。壁から30cmほど離れた位置に立ち、壁に両手をつけて腕立て伏せを行います。

壁腕立て伏せのコツ
壁腕立て伏せは、壁からの距離によって負荷を調節することができますが、あまり壁に近すぎると、腕や肩への負担が大きくなってしまいます。そのため、壁から適度に離れ、手を肩幅より広めに広げるのがポイントです。

平泳ぎに役立つ大胸筋を鍛えるための壁腕立て伏せトレーニング

6.僧帽筋(そうぼうきん)

僧帽筋とは、肩から背中にかけて覆う筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の僧帽筋の場所をCGイラストで

肩甲骨を持ち上げたり、内側に寄せたりする動作に関与し、平泳ぎではアウトスイープとインスイープの切り替えに使われます。

同じ姿勢を続けたり、運動不足による僧坊筋の血行不良は肩こりの原因になります。広背筋に効果があるチューブを使ったラット・プルダウンは、肩甲骨を寄せるイメージでチューブを左右に引くことによって、僧帽筋を鍛えることもできます。

7.三角筋(さんかくきん)

三角筋とは、鎖骨から上腕骨、肩甲骨にかけて覆う三角形の筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の三角筋の場所を骨とセットで

腕や肩を動かす動作に関与し、平泳ぎではリカバリーの際に使われています。

三角筋は、前部・中部・後部の部位ごとに鍛える方法が異なります。例えば、ダンベルを使ったトレーニングには、フロント・レイズ(Front Raise)、サイド・レイズ(Side Raise)、リア・レイズ(Rear Raise)がありますが、それぞれチューブを使って行うことが可能です。

平泳ぎの泳ぎ方については、こちらの記事をご覧ください。平泳ぎのキックの詳しい打ち方のほか、キャッチ・プル・リカバリー・グライドのストロークの方法が分かります。

平泳ぎのキックでよく使う筋肉

平泳ぎのキックには、三角形を描くように水を蹴るウエッジキックと、孤を描くように水を蹴るウイップキックの2つがありますが、最近はウイップキックが主流になりつつあるようです。

ウイップキックも手の動きと同じように、キャッチ、プル、リカバリー、グライドの4つに分けられ、さらに、プルにはインスイープとアウトスイープの2つがあります。キックの動作では、臀部からふくらはぎにかけての、主に次の9つの筋肉が使われます。

平泳ぎのキックでよく使う筋肉の図解

1.大臀筋(だいでんきん)

大臀筋とは、臀部(お尻)を広く覆う最も面積が広い筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の大臀筋

脚を後ろに反らせる動作に関与し、平泳ぎではキャッチの際の足を引き寄せる際に使われます。

大臀筋は、スクワットで簡単に鍛えることができます。スクワットとは、上半身を立てた状態で膝の屈伸を繰り返す運動のことで、1セット10回をめどに、インターバルを開けながら、体力に合わせて2~3セット行うといいでしょう。

動画のように、太ももと床が平行になるまで腰を下ろします。その際、足を肩幅よりも少し広めに開くと、大臀筋に効果的に負荷をかけられます。

2.腓骨筋(ひこつきん)

腓骨筋とは、ふくらはぎの外側からかかとにかけて伸びる、次の3つの筋肉で構成される筋肉群の総称です。

平泳ぎで使う筋肉の腓骨筋の中の長腓骨筋

  • 短腓骨筋(たんひこつきん)
  • 長腓骨筋(ちょうひこつきん)
  • 第三腓骨筋(だいさんひこつきん)

足の関節を曲げたり、外側に反らせたりする動作に関与し、平泳ぎではキャッチの際の足裏を後方に向ける際に使われます。

腓骨筋は、ゴムチューブを使ったストレッチで簡単に鍛えることができます。チューブで作った輪に足をかけ、親指側に引っ張りながら、足首を逆方向の外側にひねります。この時、腓骨筋に負荷をかけるために、足首の外側を意識しながら動かします。

3.ハムストリングス

ハムストリングスとは、太ももの後ろ側にある次の3つの筋肉で構成される筋肉群の総称です。

  • 大腿二頭筋(だいたいにとうきん)
  • 半腱様筋(はんけんようきん)
  • 半膜様筋(はんまくようきん)

平泳ぎで使う筋肉のハムストリングスの場所

膝を曲げたり、脚を後ろに反らせる動作に関与し、平泳ぎではキャッチの際に足を引き寄せたり、リカバリーで脚を伸ばす際に使われます。

ハムストリングスを鍛えるトレーニング方法にはスクワットのほかに、レッグ・カール(Leg Curl)があります。レッグ・カールは、マシンを使って行うのが一般的ですが、動画のようにマシンがなくても簡単にできます。

4.前脛骨筋(ぜんけいこつきん)

前脛骨筋とは、脛の外側の部分を覆う筋肉です。

平泳ぎで使う筋肉の前脛骨筋の場所

足の関節を曲げたり、足首を内側に曲げたりする動作に関与し、平泳ぎでは、キャッチからアウトスイープ、インスイープにかけて使われます。

前脛骨筋を鍛えるには、トゥ・レイズ(Toe Raise)というトレーニング方法があります。その名の通り「つま先を起こす」という地味なエクササイズで、立った状態で行うほかに、ゴムチューブで負荷をかけてつま先を上げ下げします。

5.大腿四頭筋(だいたいしとうきん)

大腿四頭筋とは、太ももの前面を覆う次の4つの筋肉で構成される筋肉群の総称です。

  • 大腿直筋(だいたいちょっきん)
  • 外側広筋(がいそくこうきん)
  • 中間広筋(ちゅうかんこうきん)
  • 内側広筋(ないそくこうきん)

平泳ぎで使う筋肉の大腿四頭筋

股関節を曲げたり、膝を伸ばしたりする動作に関与し、平泳ぎではキャッチからリカバリーまでのキック全般に使われます。

大腿四頭筋を鍛える方法には、ノーマルなスクワットのほか、専用マシンやチューブで負荷をかけた状態から膝を伸ばすレッグ・エクステンション(Leg Extension)があります。その際、膝が不安定になってしまうと、負荷が分散されるため注意が必要です。

6.内転筋(ないてんきん)

内転筋とは、骨盤から太腿の内側にかけて覆う次の5つの筋肉で構成される筋肉群の総称です。

  • 大内転筋(だいないてんきん)
  • 短内転筋(たんないてんきん)
  • 長内転筋(ちょうないてんきん)
  • 恥骨筋(ちこつきん)
  • 薄筋(はっきん)

平泳ぎに重要な内転筋

開いた脚を閉じたり、脚を内側にねじったり、脚を後ろに反らせる動作に関与し、平泳ぎではアウトスイープやリカバリーの際に使われます。

内転筋を鍛えるためには、足を広めに開いてスクワットを行うワイド・スクワット(Wide Squat)のほかに、動画のような横になった状態で上げた脚をゆっくり下ろすサイド・レッグ・レイズ(Side Leg Raise)があります。

7.下腿三頭筋(かたいさんとうきん)

下腿三頭筋とは、ふくらはぎの後ろ側を覆う次の3つ筋肉で構成される筋肉群の総称です。

  • 腓腹筋内側頭(ひふくきんないそくとう)
  • 腓腹筋外側頭(ひふくきんがいそくとう)
  • ヒラメ筋(ひらめきん)

平泳ぎで使う下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)

膝を曲げたり、足の関節を曲げたりする動作に関与し、平泳ぎではアウトスイープの際に使われます。

下腿三頭筋を鍛えるにはスクワットのほかに、カーフ・レイズ(Calf Raise)というトレーニングが有効です。カーフ・レイズとは「ふくらはぎを持ち上げる」という意味で、小さな段差を利用してつま先立ちを行うことで、ふくらはぎの筋肉を鍛えます。

8.縫工筋(ほうこうきん)

縫工筋とは、太ももの前面を、下に向かって斜めに伸びる細長い筋肉です。

平泳ぎのキックで使う縫工筋

股関節や膝関節を曲げる動作に関与し、平泳ぎではインスイープやリカバリーの際に使われます。

縫工筋は単体で鍛えるのが難しい筋肉ですが、ワイド・スクワットのほかに、ステップ・アップと呼ばれる昇降運動や、仰向けの状態で足を上下に動かすレッグ・レイズ(Leg Raise)などによって鍛えることができます。

筋力トレーニングは正しい方法で行いましょう

筋力トレーニングは、やり方が分からないまま続けてしまうと、負荷をかけすぎてしまって、筋肉や関節を痛める恐れがあることから、正しい方法で行う必要があります。

安全管理の下で行うためにも、専門的な知識を持つ人の指導を受けると安心です。また、痛みを感じる場合は、無理をせずにトレーニングを中止しましょう。

さらに、平泳ぎの効果的な練習方法を知りたいという方は、こちらの平泳ぎのドリル練習をお読みください。キックやタイミング・ドリルについて紹介しています。